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デッサンの基礎技法
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パースペクティブと遠近法について
さて、では実際にデッサンを始めるに当たり、まずは単純な立方体から取り掛かってみましょう。六面の四角い平面からなる単純な立方体を描く際、算数の教科書に出てくるような立方体を描いてはあまりにリアリティーに欠けるものとなってしまいます。ここで肝心なのがパースペクティブ、つまり、遠近感です。
たとえば一つの単純な立方体を真正面から観察した場合、立方体は視線から真っ直ぐに奥へと集束する形となります。決して、両側の面は平行にはなりません。また、立方体を斜めから観察した場合も同様に、奥へ向けて一点に集束する形で見えることになりますが、この場合は視線から立方体の二面が実際に見えているので、見えている二面が均等に正しく奥行きを得ていなければなりません。前者は一点透視図法といい、後者は二点透視図法といいますが、デッサンをする際はこの「奥行き感」を正しく描き出す力が不可欠となります。
明度とコントラストについて
明度とコントラストは、絵の全体的な印象を決定付ける重要な要素です。モチーフをデッサンする初期段階で大いに関連してくる作業であり、最終的な仕上がりの印象までを決定付けてしまうものなので、明度とコントラストをどれだけ上手に操作するかが、作品の仕上がりに大きく関わってくると言えます。
一つの構図の構想を練ったら、まずは全体的な明度、コントラストを頭の中で思い描いてみましょう。この際、白、黒、中間色の三つの色合いから全体像を認識してみると、デッサンがまとまりやすくなります。白、黒、中間色のバランスを思い描いたら、さらにそれらを三分割してみましょう。白の明度を三分割に、黒の明度を三分割に、中間色の明度を三分割にといった具合です。こうすることによって、モチーフが持つ立体感や存在感にメリハリを持たせることができます。こういった大まかな明度、コントラストから、更に細分化するといった作業は、画面の秩序やバランスを認識する上で、大いに役立ちます。
マッスと量感について
マッスというのは、簡単に言うと「決まった形のないもの」という意味になります。美術では「体積や容積、それ以外の目に見えない要素などを感じさせること」という意味で用いられる場合が多いですが、意味合いとしてはそれだけに限りません。体積や容積、重量を感じさせるような色や形などの表現をはじめとし、モチーフが持つ色や質感、ふくらみ、硬さ、強さ、温かさ、味、香り、鮮やかさ、個人的な感情なども、絵画を表現する際の大きな要素となります。
もちろんデッサンをするにあたって、マッスを必ず意識して作品を仕上げなければならないわけではありません。ですが、作品によって表現したいことや、物質からは直接的に得られない精神的、感情的表現をする際には、とても効果的な手段となり得ます。
動勢について
一般的にムーブマン(ムーブメント)といわれる「動勢」についてですが、これはいわゆるモチーフの「運動」や「移動」、「動作」、「動向」などを表すものであり、絵から動きを感じさせるような表現を指します。
たとえば線一本を描くにしても、その太さや流れ方によって、様々な動きをつけることができます。細めの線をサッと紙の上に走らせることによって、切るように走る線の動きを表現することができますし、太めの線を一定の太さで描くことによってずっしりと重い、停止した(あるいは非常に低速な)線を表現することができます。
また、紙の上に描いた線や点を一方向へ向けて指で擦ることによって、一方へ移動する物質を表現することなどができます。タッチの強弱やその他の工夫によって、モチーフの動きを表現するができます。動勢の表現の仕方は様々であり、描き方も人それぞれです。自分なりの表現の仕方を見つけていきたいところです。
トリミングと構図について
トリミングというのは、絵の対象をどのようにして構図の中に取り込むかと考えることを言います。たとえばリンゴ一つ取っても、まずはそれをどのような視点で描くか考えなければなりません。遠方から描くのか、接近して描くのか、紙の右側に描くのか、それとも中央に描くのかなど、モチーフをどのようにして構図の中に取り入れるかによって、絵の仕上がりにおける印象が大きく変わってきます。
トリミングをする時は、用紙の大きさやモチーフの大きさなどを考慮に入れ、バランスよく構図することが大切になります。適当な距離でモチーフを捉え、それを画面の真ん中を中心として描くことが理想とされますが、敢えてバランスを無視して遠めに描くことで虚無感や孤独感、静寂を表現したり、また逆に極度に近い位置からモチーフを描くことで圧迫感や緊迫感を表現したりなどもできます。
マチエールと画肌について
「マチエール」、「画肌」、ともに聞き慣れない言葉かも知れませんが、これはそれぞれ「絵の表面の質感」を指します。テクスチュアとも言われ、色合いや艶、マッチなどで多彩な変化をつけることが可能であり、描き手の個性がもっとも現れる部分でもあります。
画面の質感を表現する手法は、それこそ多種多様であり、一概にどれが一般的であるとは言えません。画面を擦ったり、削ったり、叩いたり、メディウムを使用して凹凸感を与えたりと、人によって表現の手法は異なります。たとえば壁一つを描くにしても、鉛筆を押し付けて壁の質感を表したり、全体をナイフなどで擦って(削って)質感を表したり、鉛筆や木炭を削ったものを画面に振り掛けたりと、それこそアイディア次第では無限にマチエールの表現は生まれてきます。デッサンの基本を抑えたら、こういったところで独自の個性を表現していきたいところです。